本 「家族趣味」
乃南アサ著。
短編集。
「魅惑の輝き」
身なりには一切構わない有理子が固執しているのは、キラキラのダイヤモンド、エメラルドのアクセサリー。
借金をしても、身を粉にして働いても、人殺ししても、手に入れる。
人殺しても、その罪の意識が、これぽちもない。
もう、心は、この世になかった。
「彫刻する人」
恋人から後姿を“富士山”と言われる、むっちりした体型。
休日は昼間からビールと、料理上手の恋人が作ってくれるおいしい料理でまったり。
健康でいて欲しい、という恋人から言われたのと、太り過ぎを自覚して水泳を始めた恒春。
その水泳から、ウエイトトレーニングになり、自分の体つくりが。
彫刻、は、自分の体。
ここでも、ひとり、死ぬ。
留置場に入っても、自分の体つくりだけを考えている。
「忘れ物」
仕事と恋愛に少し貪欲な美希。
理想的な上司な本橋
イケてる同僚で恋人になる坂口。
美希には見えない三角関係。
やがて…。
ここにも死に人。
殺人者の方は、その認識はない。
「デジ・ボウイ」
人の気持ちに沿うことができない彰文。
いとこの頑張り屋の直樹。
ここでは殺人はないけれど、直樹のために死んでいく彰文がいる。
「家族趣味」
仕事も、家族も、恋人も、自分の好きなように、心地よいように付き合っているカコ。
この話が一番怖かった。
取り巻く環境も背景も全然違うけれど、カコが、自分の年齢に近いから?
一番、感情移入できる性格だから?
もし、万が一、わたしが結婚していたら、こうなっている可能性あるから?
結婚してなくても、年を取っていく不安がわかるから?
遊びと割り切って付き合っていた11歳下の英輝と別れの時がやってくる。
英輝に若いオンナノコの影がちらほら。
そうなると立場が上だったカコは悔しい。
とにかく、一番に憂鬱になったのは、彼がその娘の話をする時に「ぴちぴち」という表現を使ったことだ。そう言うと、一恵はぽかんとなり、それから声を上げて笑った。
「何? あんた、それで焼きもち焼いてるっていうわけ?」
「だって」
「しょうがないじゃないよ、そんなの。誰が考えたって、二十歳を過ぎたばっかりのよ、独身の女の子の方がぴちぴちしてるに決まってるわ。四十近くなったおばさんが、そんな娘と張り合おうって言うの?」
カコが口を尖らせ、納得しない時。
わたしも同じように口を尖らせ、ぷーっとしてしまう。
何と言われようと、私はそう簡単に納得するわけにはいかなかった。確かに、理屈では分かっている。(中略)だが、自分が確実に老いに向かっていることを、そんなにあっさりと認めるつもりには、私は絶対になれないのだ。
(中略)一恵の眼差しは冷ややかなものだった。私は、彼女が平気で自分のことを「おばさん」などと言える、その神経を疑った。なぜ、平気でそんな表現を使えるのか、信じられない。
この物語は、それだけではない。
お酒の失敗。
失敗、どころの騒ぎではない。
人生が狂うほどの。
それまでの4つの物語同様、死人。
とにかく、飲み過ぎには気をつけよう。
新潮文庫
短編集。
「魅惑の輝き」
身なりには一切構わない有理子が固執しているのは、キラキラのダイヤモンド、エメラルドのアクセサリー。
借金をしても、身を粉にして働いても、人殺ししても、手に入れる。
人殺しても、その罪の意識が、これぽちもない。
もう、心は、この世になかった。
「彫刻する人」
恋人から後姿を“富士山”と言われる、むっちりした体型。
休日は昼間からビールと、料理上手の恋人が作ってくれるおいしい料理でまったり。
健康でいて欲しい、という恋人から言われたのと、太り過ぎを自覚して水泳を始めた恒春。
その水泳から、ウエイトトレーニングになり、自分の体つくりが。
彫刻、は、自分の体。
ここでも、ひとり、死ぬ。
留置場に入っても、自分の体つくりだけを考えている。
「忘れ物」
仕事と恋愛に少し貪欲な美希。
理想的な上司な本橋
イケてる同僚で恋人になる坂口。
美希には見えない三角関係。
やがて…。
ここにも死に人。
殺人者の方は、その認識はない。
「デジ・ボウイ」
人の気持ちに沿うことができない彰文。
いとこの頑張り屋の直樹。
ここでは殺人はないけれど、直樹のために死んでいく彰文がいる。
「家族趣味」
仕事も、家族も、恋人も、自分の好きなように、心地よいように付き合っているカコ。
この話が一番怖かった。
取り巻く環境も背景も全然違うけれど、カコが、自分の年齢に近いから?
一番、感情移入できる性格だから?
もし、万が一、わたしが結婚していたら、こうなっている可能性あるから?
結婚してなくても、年を取っていく不安がわかるから?
遊びと割り切って付き合っていた11歳下の英輝と別れの時がやってくる。
英輝に若いオンナノコの影がちらほら。
そうなると立場が上だったカコは悔しい。
とにかく、一番に憂鬱になったのは、彼がその娘の話をする時に「ぴちぴち」という表現を使ったことだ。そう言うと、一恵はぽかんとなり、それから声を上げて笑った。
「何? あんた、それで焼きもち焼いてるっていうわけ?」
「だって」
「しょうがないじゃないよ、そんなの。誰が考えたって、二十歳を過ぎたばっかりのよ、独身の女の子の方がぴちぴちしてるに決まってるわ。四十近くなったおばさんが、そんな娘と張り合おうって言うの?」
カコが口を尖らせ、納得しない時。
わたしも同じように口を尖らせ、ぷーっとしてしまう。
何と言われようと、私はそう簡単に納得するわけにはいかなかった。確かに、理屈では分かっている。(中略)だが、自分が確実に老いに向かっていることを、そんなにあっさりと認めるつもりには、私は絶対になれないのだ。
(中略)一恵の眼差しは冷ややかなものだった。私は、彼女が平気で自分のことを「おばさん」などと言える、その神経を疑った。なぜ、平気でそんな表現を使えるのか、信じられない。
この物語は、それだけではない。
お酒の失敗。
失敗、どころの騒ぎではない。
人生が狂うほどの。
それまでの4つの物語同様、死人。
とにかく、飲み過ぎには気をつけよう。
新潮文庫
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